Jean-Marie LIOT©
フランスという国は海洋先進国と呼ばれることが多い。フランスといえばベネトウ/ジャノーの国、マリン先進国として知られるアメリカのプレジャーボートの中でセールボートが占める割合が6%であるのに対し、フランスは20%にも達する。その意味ではフランスはセールボート天国と呼べるかもしれない。
プラスチモの本社があるのは、パリから西へ約450km離れた大西洋岸の街、ロリアン。 人口10万人の静かな港町。 大西洋から5kmほど入江になった河口には約1000隻ものプレジャーボートがひしめき、ボート、ヨットの係留地が街に入り込み、立ち並ぶマストが町の風景。
プラスチモの創設者、アントワン・ズリアニが、この地でブイやフェンダー、ライフジャケットなどを作る商売を始めたのが今から約50年前、1961年のことだった。
当時、木材や銅など重たい素材で作られることが多かった船上の備品を、軽く加工が簡単なプラスチックで作るというズリアニの発想はすぐさま市場に受け入れられ、当時2人でスタートした会社は2年後の1963年には35人のスタッフを抱えるまでに急成長した。
社名のPLASTIMOはプラスチック(plastic)+フランス語で海を意味するメール(la mer)に由来し、まさに海の世界にプラスチックを持ち込んだ発想にちなんだものだった。
1972年には、現在の主力製品になっているナビゲーション備品の生産がスタート。世界初のプラスチック製マグネチックコンパス「コンテスト」シリーズは世界中の船乗りを驚かせた。それまでのコンパスは、ステンレス・木材・ガラスといった素材で作られていた。現在ではあたりまえになっている、コンパスカード(文字盤)を平面から立体にして側面にも目盛りをふるという発想も、この当時のプラスチモが考え出した革新的アイデアだった。
その結果、「コンテスト」シリーズは現在でも“最も売れているマグネチックコンパス の地位を維持している。この勢いに乗ってプラスチモ社は再び急成長した。スタッフの数は350人を超え、カタログには2000点以上の製品が並んだ。
現在プラスチモは、安全備品、ムアリング用品、コンパス、デッキフィッティング、ジブリーリング、電子計器など11部門の製品をラインナップしており、その製品の数は6,000を超える。
個性的でありながら機能性に富んだデザインと、安全性を第一に考えたプラスチモ製品は、7500社のディーラーを通じて世界104ヶ国で販売されており、今なおアジアや南半球にマーケットを拡大しつつある。 これも、世界各国からのユーザーの声をモデルチェンジの度にフィードバックする姿勢と、ひとつひとつの製品が手作りに近い工程で生産されることによる品質の確かさ、その品質の自信のあらわれとも言える保証期間の長さ(コンパス類で生産から5年、但し日本国内では販売から3年となります)からも分かる。 最も成熟した感のあるコンパスの分野では、長きにわたって数々のセーラーのチャレンジをサーポートしてきた。古くはアメリカ杯でのデニス・コナーチーム、フランスの五輪代表チーム、旧ホイットブレッドレース、ブローブチャレンジなど。
日本では1994年単独無寄港世界一周最年少記録を達成した白石康次郎さんがプラスチモのコンパスを道しるべに緯業を達成した。
2012年度現在PLASTIMO社を中心とした各ブランドは、ヨーロッパを中心に世界中にその存在感を広めている。
公式サイトはこちら https://www.plastimo.com